ゲーム理論を用いることについての最初の障壁

人狼ゲーム理論の入門書にあるようなゲームとは大幅に趣を異にする。
というのは、最初は誰がどのサイドであるか分からないからだ。




多くの配役において、狼サイドは初期状態に於いてマイノリティ(少数派)である。
故にあからさまに狼サイドの利得を最大化しようとすると、村サイドから排除されてしまう。
従って、狼サイドは村サイドの利得を最大化するかのように振る舞わねばならない。
よって、傍目から見るとプレイヤー全員が村サイドの利得を最大化し、
狼サイドの利得を最小化しようとするような行動をとっているかのように見える。



ここに人狼ゲーム理論を適用する最初の大きな障壁がある。
初歩のゲーム理論に用いられている例では、初めから敵と味方がはっきり分かれ、
その利得は簡単に表記できるものになっており、鞍点が存在する。

ところが、人狼では異なっている。
本音と建前*1の利得が2種類存在している。
このことは、1つのゲームにおいて2種類の利得を計算せねばいけないようなものになる。
(実際は、ゲーム序盤になればなるほど複数の利得を計算せねばならないのだが、この場合は鞍点が存在するケースが多い(はず))


ところが、この2種類の利得があることにより、ゲーム理論適用の糸口が見えてくる。
即ち、この本音と建前の利得の差を、狼サイドは最大化し村サイドは最小化しようとする。



問題はこの2種類(以上)の利得をどのように記述すれば良いのかということである。
配役が決定した場合、その利得はプレイヤーによらず決定されているはずである。
(つまり、ネタバレを受けたあとでゲームを行えば、サイド毎に思惑は一致するはずである)
ということは、各プレイヤーの行動指針を直接的に操作しているのは推理(配役予想)である。
この予想は確率的に記述されるものであろう。
この確率と利得の積によって各プレイヤーの行動が決定されているはずである。
よって利得は、配役予想と積をとることが出来る形で記述できると予想される。



また、確率と利得の積は各プレイヤーの利得行列とも考えられる。
つまり、ゲーム理論で一般的に展開されている理論では、
各プレイヤーが利得行列を共有しているのに対し、
人狼においては各プレイヤーが独自に利得行列を設定している。
しかも、これは流動的なものである。

このことが、先に示した人狼ゲーム理論を適用するにあたっての最初の障壁の大元になると考えられる。




さらに、確率と利得の積によってゲームを記述できるとすれば、ゲーム全体を分けて考えることが出来るはずである。
それは、今まで考えられてきた戦術を2種類に分けて考えることが出来るはずである。
つまり、各プレイヤーの推理(確率)を操作する戦術と利得(の印象)を操作する戦術の2種類である。
利得を操作することは、本来は不可能であるはずなので、かなり論理性を欠いた戦術であると考えられる。
従って、今まで考案されている多くの戦術は確率を操作する戦術であるはずである。





続く?

*1:本音と建前; 真実と虚偽といってもいい